抗凝固薬は、ワーファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC,NOAC)では年間にかかるお金はどれくらい違うのか?
「先生、新しいお薬が増えてから、お薬代が急に高くなりました。」
今回の患者さんは、55歳の女性Kさん(仮)です。
昨年秋頃に急性肺動脈血栓塞栓症を発症して、他院に救急車で運ばれました。
集中治療により軽快し、無事退院。
外来で、入院中の経過を聞いているときに、薬代のことについて訴えがありました。
Kさんのお薬内容は以下の通りです
エリキュース5mg2錠 545.60円
ネキシウム20mg 160.10円
調剤料、基本料などを除いて考えます。
薬剤料は、1日合計705.70円 1か月合計 21,171円(2120点)の3割負担で707点
1月のお薬にかかるお金が7,070円
1年間合計 84,840円
こう考えると、かなり莫大な出費です。
さて、そこで患者さんの疑問です。
・新しいお薬はワーファリンと比べてどれくらい高い?
・効果は違う?
・私にはどちらが適しているの?
でも今のKさんには必要ですよ
DOACというお薬は、ここ数年間で出てきた新しいお薬です。血をサラサラにして血栓予防の効果があり、はじめは心房細動に対するお薬として認可されました。
ここ最近では、肺動脈血栓塞栓症や、深部静脈血栓症といった、静脈血栓塞栓症に対しても適応が広がっています。
Kさんと話をしていて、いろんな疑問が改めて浮かんできました。。
・心房細動に対するDOAC(高い薬)とワーファリン(安い薬)の効果の差、安全性の差は?
・ワーファリンが適した人とDOACの適した人はどのような人?
・心房細動の適応と静脈血栓塞栓症の適応
・DOACどうしの適応の違い、薬価の違いは??
今回は特に、Kさんのような急性肺動脈血栓塞栓症に使用する場合に、この3点を改めて調べてみました。
1.ワーファリン、エリキュースのお薬代の違いは?
2.ワーファリン、DOACのメリット・デメリット
3.ワーファリンはどのような患者に適し、DOACはどのような患者に適するか
1.ワーファリン、エリキュースの薬代の違いは
Kさんは、肺動脈血栓塞栓症に対して抗凝固療法(エリキュース)と、胃の保護薬(ネキシウム)が処方されていました。
現在、1日合計705.70円 1か月合計 21,171円(2120点)の3割負担で707点
1月のお薬にかかるお金が7,070円
1年間合計 84,840円
胃の保護薬については、また後日比較することとします。
抗凝固療法については、大きく分けて2種類あります。
ワーファリンと直接(新規)経口抗凝固療法(DOAC,NOAC)です。
ワーファリンは、古くからある抗凝固薬で、DOACは比較的最近でてきた新規薬剤です。
ワーファリンは古くからあるため、薬価は安いです。
(0.5mg:9.60円、1mg:9.60円、5mg:9.90円)
一方で、DOACはワーファリンの10~60倍かかります。
仮にKさんが、DOACであるエリキュース5㎎2錠の代わりに、
ワーファリン5㎎を処方されたとします。
ワーファリン5㎎とネキシウム20㎎にかかる薬代は1日 160.10円+9.90円で170.0円となります。
1か月合計 5100円(510点)の3割負担で170点,1月のお薬にかかるお金が1700円
1年間合計 20,400円
です。
エリキュース内服の現在は、1年間合計 84,840円ですから、
年間で64,440円の違いになります!!!
診察料(初診料や検査料金など)や、医療機関までの公共交通料金等を合わせて、
1年間で10万円以上の医療費には税金が控除されますが、
年間6万円以上のお薬代の差はとても大きいです。
Kさんが、薬代について思うところがあるのも納得できます。
では、新しいお薬であるDOACとはどのような薬なのでしょうか。
この薬価の差を補うだけの効果が期待できるのでしょうか。
次回はここら辺の疑問に対して医療従事者の目から、根拠に基づいてDOACが処方された理由を解説していきたいと思います。
次回のテーマ
ワーファリンはどのような患者に適し、DOACはどのような患者に適するか